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安易な繁殖の危険性


安易な繁殖の危険性

 伝統的な羊飼い達の間で「犬を試すならヒル(丘)を使うべし (Let the hill prove the dog.)」という格言があるそうです.不健康な犬はスコットランド,ウェールズ,北イングランドの険しい丘で生き残れない,というわけです.ここから一つの神話(迷信?)が生まれました.「ボーダーコリーは頑健で遺伝的な疾患とは無関係な犬種である」と.

 牧羊犬が牧羊犬として使役されていた時代には,それこそ毎日50〜60マイル,多いときには100マイル以上も荒れた丘陵地帯を駆け回らねばならなかったとされています(現役の牧羊犬は今でもそうでしょう).確かに,疾患を持った犬達は自然に近い形で淘汰されてきたかもしれません.

 ところがその一方で,ラインブリードやインブリードが普通のように繰り返されてきました.シープドッグトライアルの性能を追求するためです.潜在的には遺伝疾患の生じ易い遺伝子プールが形成されてきたと言えます.事実,米国の統計では,現在約25%のボーダーコリーが股関節形成不全,眼病,テンカンなど何らかの遺伝疾患を持っているとされています.コンパニオンドッグとして急速に普及し始めた今日,牧羊犬時代のような淘汰が働きにくくなり,その弊害が心配されています.

 遺伝疾患の対策には計画的な交配が不可欠ですが,それも並大抵のことではありません.何世代も溯った綿密な調査と,科学的な検査が必要です(それでも完全に無くすことは不可能と言われています).その犬や兄弟,両親に症状が見られなくても,潜在的な危険因子のキャリアであることは珍しいことではありません.

 もはや牧羊犬の時代に逆戻りして犬をふるいにかけることはできません.今度は,交配をコントロールする人間の側(ブリーダー?)が淘汰されるべき時代なのかも知れません.

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